霧島家は、何故か一部突出して、デウスエクスに狙われやすい者が居る。
私は、先代からその知識を伝えられた。
唯一、私だけが、兄弟の中で、目覚めなかったのも。
………この責務を負うためなのかも、しれない。
カイト、いや、戒斗。
お前が『贄』の運命を、破壊してくれることを、私は、望んでいる。
龍矢は、きっと、戻らないのだろう。
だが、彼の中に私の息子が生きていたことを、
私は喜びたいのだ。
だからこそ、だ。
辰馬さんが、こうして、私達の前に現れた事から得た『確証』を、話したい。
まず、霧島家は、ケルベロスという単語がなかった頃から、
ケルベロスのなりそこないが、産まれてきやすい一族だった。
その為に、龍に狙われていた。
龍や、辰の名を含むのは、龍に『名で所有されている』と、形骸的に示す為のものだとも、言われている。
そして、霧島家は外種族を採り入れようとした。
だが、子は『地球人』しか、産まれなかった。
これは、お前達の代も、例外なく起きた。
……………その為。霧島家は、人為的に『贄』の力を強めた存在を、産み出そうと、していた………らしい。
私も、信じがたかったが………………
……辰馬さんが、その事実を、示したのだ。
今でいう土蔵篭りの呪法のようなことを行っていたと。
辰馬さんは、家系図に、『急に』現れている。
きっと、伏せられた存在が、居たのだろう。
大量の『贄』が、辰馬さんを、産み出すまでに、消費されたのだろう、と。
………当代の当主として、辰馬さんには頭が、上げられなかった。
だが、辰馬さんは『儂(オレ)の事実を見て嘆くならば、今ある未来の為に、儂(オレ)の力を使え』と、言った。
辰馬さんは、お前達で、最後に、したいらしい。
この、呪われた、宿命を。
私には、お前達のように、力はない。
この身に、力があれば、お前達を必要以上に苦しめることは無かっただろう。
だが、私は、無力なままだ。
お前達に、頼ってしまうことを、許して、欲しい。
PR